鴨川日記

本の紹介を中心に活動しています。

2017年映画ベスト

 
 この記事の原版は2017年12月30日に公開したものであり、それをここに書き改めるものである。もともとこの記事が書かれた動機は、自分自身の従来の考えに反して私の「自分語り」をすることだった。私は「自分語り」は基本的に空しいものだと考えている。ここにいう「自分語り」とは自分自身の話をきいてもらうことを目的とした語り(例えば、「物語ることによる慰め」や「自己顕示」)であり、それは例えば解釈の上にどうしてもあらわれてしまう自分自身の性格や趣味、状況などとは区別される。つまり、私は、語る必然性のある文脈で、語ることに自ら納得した上で、自らを語るという拘りを持っているということだ。ここに、そして別の場所に発表してきた文章は全てその拘りのもとに書き連ねてきたつもりだ。当然、今書いていることも。
 しかし、当時の私は今まで書いてきた全ての文章が空しいと感じていた。自分自身が書いたものは結局自己満足だったのではないかと、もっと別の仕方で文章を書くべきではないかと。文章に携わろうとするすべての人が通る道だろうが、ちょうど自分が書くべきもの、やるべきことを探している時期だった。その「別の仕方」を「自分語り」に求めること。これはこの文脈において一つの実験だった。書くべきもの、やるべきことが見つかりつつある今、この記事はもう要らないのである。
 以下、以前通りの「拘り」に従って、基本的には「自分語り」を削除する方向で修正した。せっかく時間をかけて作ってしまった以上、これらの作品を知ってもらうきっかけとなるのであれば、今の私にとっても価値があろう。
 
1 牯嶺街少年殺人事件

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2 タンナ

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3 光と血

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4 ハッピーアワー

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5 細い目

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6 タンジェリン

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7 そうして私たちはプールに金魚を、

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8 ネルー

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9 娘よ

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0 メッセージ

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 以上がベストテン。ちなみに、今年のワーストはダントツで『お嬢さん』。削除しようと思って目を通していたら、もう一回同じ文章を書いて本人に送り付けたくなってきたので、ここだけ敢えて残しておく。

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 原作『荊の城』を読んでいないので誰の責任かは分からないが、脚本が安っぽすぎて全く面白くない。色本で教育されて育った朝鮮半島の「深窓の令嬢」という下品な設定は如何なる手を尽くしても擁護しがたい。フェミニズムや植民地問題に関心がありますとでも言いたげな演出が目立つが、こういう言い訳めいた映画が一番嫌い。チャヌクお得意のどんでん返しは、もはやあざとさを通り越している。これをやっておけば観客は喜ぶのだろうと考えてやっているようにしか見えず屈辱的。また、彼女たちの初夜を描く場面はあまりに酷くて思わず声をあげて笑ってしまった。自身の代表作『オールド・ボーイ』で用いた近親相姦の場面よりもずっと下品で、この人はまだ下が撮れるのかと本当に驚いた。それでいながら舞台設定や小物、女優などで趣味良さそうに画面を取り繕っているのは、映画監督としてというよりも、人として愚かしいと思う。こういう映画が事もあろうに名のある映画祭に出品され、多くの人の目に触れたこと自体嘆かわしい。この映画を評価する全ての人にこの程度の駄作に騙されないで欲しいとお願いしたいし、監督には一刻も早く引退してほしい。一方で、主演のキム・ミニは来年鑑賞予定のホン・サンスの新作に出演しているのでそちらでの活躍に期待している。
 
 2017年最も印象的だったシーンは、『愚行録』より以下の場面。これも他の感想より面白かったので、残しておく。

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 私は『愚行録』を作品として評価する気はさらさらない。正直ほぼ全編退屈だった。特に、人間の「黒い部分」を衝撃的なものだとみなし、あまりにも不幸に作り上げられた人物設定を使って人間の狂気を描くことが面白いと考えている愚か者の書いた脚本であることは明白で、思い返すだけで腹立たしい。
 ただ、カメラを見据えての自らが犯した一家殺人事件の真相を告白するこの一人芝居には、のめり込むような興奮を覚えた。画面を見つめて淡々と殺害の様子を語る場面が突然部屋の扉が開くことによって遮られる。そして、その場面が彼女が誰もいない虚空に向って話していた独白だと我々は知るのだ。この後に用意されている、彼女の子供が妻夫木聡演じる兄との間にできた子だと露呈する際のゾクッとするような演技も含め、抗えない迫力がある。満島ひかりのアイドル映画として、この場面だけ見返したい。
 なお、この場面と、上でも指摘した兄妹の秘密を踏まえると、なぜ妻夫木演じる雑誌記者が妹の犯した一家惨殺事件の真相を追うことに拘ったのかという疑問に、ある答えが浮かぶ。それは、真犯人として妹の名前を挙げた関係者を殺害するためだ。
 作中では兄と妹の秘密が露呈される場面で、妹は「秘密って大好き」という台詞でそれを暗示している。当然この「秘密」とは近親相姦のことであり、つまりともに親から虐待を受けていた兄妹の密接な関係における「二人だけの秘密」なのだ。
 果たして彼は本当に真犯人が妹だと知らなかったのか。この疑問が、作中ですっぽりと省かれている彼の仕事への動機に説明がつく。実際、妹の名前を挙げた大学時代の同級生は、彼によって殺害されており、彼の周到な工作で被害者の恋人が犯人とされてしまう。これも最初から殺すことが目的だったと考えないと、できすぎている。とすると、事件の被害者の大学時代の恋人が真犯人を知っているとして連絡をしてくる場面も少しゾッとした気持ちで振り返らねばならないことになる。このような情報の出し入れの妙技を持っているなら、もっとマトモなものを書いたらいいのに。